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奈良地方裁判所 平成9年(ワ)363号 判決 1999年4月26日

原告 株式会社X1

右代表者代表取締役 X2

原告 X2

原告 X3

原告 X4

右四名訴訟代理人弁護士 祖谷謙一

被告 第一生命保険相互会社

右代表者代表取締役 A

被告 Y1

右両名訴訟代理人弁護士 内田智

主文

一  被告らは、原告株式会社X1に対し、各自金二七七万五三五四円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告株式会社X1のその余の請求、原告X2、原告X3、原告X4の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告株式会社X1に生じた費用の一〇分の三は被告らの負担とし、その余の費用はいずれも原告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

1  被告らは、原告株式会社X1(以下「X1社」という。)に対し、各自金九二二万四一八五円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  被告らは、原告X2(以下「X2」という。)に対し、各自金二二一万六一七五円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被告らは、原告X3(以下「X3」という。)に対し、各自金二一万六四一二円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  被告らは、原告X4(以下「X4」という。)に対し、各自金六八万四〇五二円及びこれに対する平成九年四月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、被告Y1(以下「Y1」という。)の勧誘に基づき生命保険に加入した原告らがY1は勧誘に当たり「三年経てば元割れしない」旨の事実に反する説明をしたとして、同人に対しては不法行為又は契約締結上の過失に基づき、Y1の使用者である被告第一生命保険相互会社(以下「被告会社」という。)に対しては使用者責任に基づき、損害賠償責任を追及した事案である。

一  (争いのない事実)

1  X1社は貨物運送、重量物運搬等を業とする株式会社である。X2はX1社の代表取締役、X3はX2の妹、X4はX2の子である。

2  原告らと被告会社との間で締結された生命保険契約の内容、保険料、既払込保険料総額、解約返還金等支払額、危険保険料などは別紙一覧表1ないし6<省略>の通りであり(但し、解約日、危険保険料は除く。)、同6は本訴の対象にはなっていない(以下、別紙一覧表1ないし5<省略>の保険全体を「本件保険契約」という。)。

3  被告会社において、原告らの担当者は被告会社奈良中央支社の外交員であるY1であり、原告らにおいて、右保険契約締結に当たりY1から勧誘を受け、同人から説明等を受けたのはいずれもX2であった。X2はX3、X4の保険契約締結について、同人らを代理した。

4  Y1は平成四年春頃飛び込みで原告会社を訪れたところ、偶然X2の夫で原告会社の専務であるBが以前警察官として働き始めた当時上司であったY1の父親であるCに世話になったことがありY1と面識があり、そのようなこともあり以後Y1は原告会社を訪れ生命保険への加入を勧めるようになった。

二  (争点)

(原告らの主張)

1 責任

(一) 不法行為

本件保険契約の各保険は三年経てば元本割れしない性質のものではないにもかかわらず、Y1はX2に対し、右保険の勧誘にあたり、故意に「三年経てば元割れしない」旨の虚偽の説明をした。そして、二回目以降の契約締結においては、右のような虚偽の説明を繰り返し、あるいはなんら説明をしなかったので、X2は三年経てば元割れしないことを当然の前提と理解した。右説明を信じて、X2は別紙訴状添付表<省略>の二六件の保険に加入した。

仮に故意ではないとしても、生命保険の外交員としては正確な商品知識に基づき商品の性質について正確な情報を顧客に提供する義務があるのに、Y1は不確かな情報に基づき、本件保険契約の各保険は三年経てば元本割れしない性質のものではないにもかかわらず、X2に対し、勧誘にあたり、重過失により「三年経てば元割れしない」旨の誤った説明をした。右説明を信じて、X2は本件保険契約に加入した。

(二) 契約締結上の過失

仮に以上の主張が認められないならば、予備的に契約締結上の過失を主張する。すなわち、生命保険会社は、契約締結に当たり、商品の性質について正確な情報を顧客に提供する義務があるのに、被告会社は外務員であるY1を通して、「三年経てば元割れしない」旨の誤った説明をしたから、契約締結上の過失に当たる。

2 損害

原告らが被告会社に支払った保険料と受け取った解約返戻金の差額が損害となる。被告らの後記主張は否認する。

(被告らの認否、主張)

1 責任

いずれも否認する。

別紙一覧表1ないし6<省略>の通り計三一件の各種生命保険が締結されたが、それらの勧誘、説明、申込みに際し、Y1は原告らのニーズに応じて保障設計書を何枚も作成しパンフレットを手渡すなどしたほか、原告会社を相当頻繁に訪れ、口頭でもX2に十分な説明をしてそれぞれの保険契約の内容と特徴を納得してもらい加入してもらった。原告らが主張する「三年経てば元割れしない」旨の誤った説明をY1がしたことはない。遅くとも契約後一週間以内には「ご契約のしおり、定款・約款」が、また契約成立後遅滞なく保険証券が原告らに交付、送付されている。それらを見れば、加入した保険の内容を確認でき、保険証券を見れば、解約返戻金の額が確認できる。もし、原告らが主張するように、Y1が「三年経てば元割れしない」旨の虚偽の説明をしたとしたら、X2は直ちに被告らに異議を述べたはずであるが、実際には原告らはなんら異議を述べていない。

なお、別紙一覧表1の番号1ないし12の一二件の新種特別養老保険契約(以下右一二件の契約全体を「平成四年の養老保険」という。)の経緯は以下の通りである。平成四年九月から一〇月頃、X2はY1に同業他社の作成した試算表を持参し、相談した。右表には、三年後、五年後に解約した場合の解約返還金が記載されており、三年後には払い込んだ保険料とほぼ同じくらいの金額が解約しても戻ってくるように記載されていた。Y1はそのような保険を取り扱った経験がなかったため上司のD支部長にそれを見せ、全く同じ内容で試算表を作成してもらい、原告会社に試算表と自ら作成した保障設計書などを持参した。その後、原告会社を二、三回訪問し、X2は商品内容や特徴は同業他社から聞いて知っていたので、X2と主に保険料の支払方法の打ち合わせをした。右一二件の契約の際、X2は同業他社の作成した試算表を示しながら「こういうふうに三年たったら解約しても払い込んだ保険料くらいは戻るんやな。」とY1に質問し、同人は自分の見聞きした範囲では養老保険は三年程度保険料を払い込めば解約返戻金として払い込んだ保険料程度は戻ってくるように思うと答えた。しかし、「絶対に元本割れしない」旨の説明をしたことはない。

2 損害

否認する。被告会社は、各保険契約の期間中、それぞれの保険商品の内容に応じた保障をしていたのであり、単純に支払った保険料と受け取った解約返戻金の差額が損害となるというのは不当である。また、原告会社が契約者となっている平成四年の養老保険については、原告会社は保険料を経費として損金に処理することにより多大な節税メリットを享受している。それに相当する部分について損益相殺を主張する。

第三争点に対する判断

一  責任―不法行為について

1  まず、平成四年の養老保険について検討する。

X2(昭和二八年○月○日生まれ)は、本人尋問において、原告会社は平成四年一月三一日にそれまでの有限会社から株式会社として設立されたが、その後Y1から勧誘される前に、はっきりしないが火災保険に加入していた第一火災のEから従業員の福利厚生などを主目的として従業員を被保険者とする養老保険に加入することを勧誘され、同人は二、三回くらい説明をしに来て同人からプラン書を受け取ったこと、しかし、当時あまり興味がなかったため右プラン書を保管していたが、その内容については目を通しておらず契約を締結するような段階ではなく、元割れするかどうかというような話が出たかははっきり覚えていないこと、その後Y1が原告会社を訪れた際、同人に右プラン書を見せたところ、同人から被告会社において見積書を作らせて欲しいとの話があり、それを承諾し、Y1が右プラン書を持ち帰ったこと、その後Y1が被告会社の作成したプラン書を持参し、右養老保険について説明したこと、過去に加入した学資保険の経験などから一般的に保険は解約すれば損が発生することがあることはわかっていたので、右保険の場合どのくらい経てば解約しても損をしないか確認したところ、Y1は三年経ったら元割れ(「もとわれ」という言葉が使われた。それは、払込の保険料と解約返戻金とを比較して、後者が前者に比較して少ないことを意味する。)しないと説明したこと、Y1から右保険は貯蓄と一緒であるという説明があり、右のような説明に加えY1がX2の夫Bが以前世話になったCの娘であることもあり、平成四年の養老保険に加入したこと、本件契約を被告会社と締結し、被告会社からそれに関する保険証券や「ご契約のしおり、定款・約款」などをもらったが、保険証券に記載された解約返戻金の額の記載を見たことはなく、「ご契約のしおり、定款・約款」の内容についてY1から説明を受けたことはなく、同人を信頼していたため読んだりはしていないことなどを供述する。

次に、Y1は、本人尋問において、Y1が原告会社を訪れた際、X2から他社生保が作成した養老保険のバックアッププランを示され、後は判を押すだけで入ろうと思っていると言われたこと、右バックアッププランには一年目、二年目、三年目の支払保険料と解約返戻金の額が記載されていたこと、右バックアッププランを見てY1がX2に対し、「三年目で元割れしないということで、その表で三年ぐらいたったら、大体返ってくるねんということ」を言ったと思う(五丁裏)が、絶対に元割れしないとは言っていないこと、その日右バックアッププランをX2の承諾を得て持ち帰り、被告会社において基本的にそれと同じ内容の保障設計書(乙第一〇、一一号証)を作ってもらい、申込書などとともにX2に持参し、保険料の支払方法などについて説明したこと、右保険について三年経ったら元割れしないという話をしたのは前記一回だけであったこと、X2に勧誘した養老保険についてX2との間で三年経ったら元割れしないという確認をしたこと、被告会社において受けた研修において一〇年満期の新種特別養老保険を解約した場合の解約返戻金の額について教育を受けたことはなく、X2に言ったこと(「三年経ったら元割れしない」)が事実であると右勧誘当時思っていたこと、右契約締結までの間自分で右保険について解約返戻金の額を調べたことはないこと、別紙一覧表6の2、3<省略>の新種養老保険(本訴対象外)の加入に際してもX2との間で一年半か二年経てば元割れするかしないかということが話されたことなどを供述する。

ところで、Y1の右供述全体が信用できるかは問題である(平成四年の養老保険の加入に際し「三年経ったら元割れしない」という話をしたのは前記一回だけであったという点は、Y1自身X2から他社生保のバックアッププランを示された際そのような話をしたこと、さらにX2に勧誘した養老保険についてX2との間で三年経ったら元割れしないという確認をしたことを認めていること、X2は平成四年の養老保険については元割れするか否かという点に重きを置いていたと認められることなどから、にわかに信用できない。)が、Y1の供述によっても、一年目、二年目、三年目の支払保険料と解約返戻金の額が記載された他社生保のバックアッププランを見てY1の方からX2に対し、「三年目で元割れしない」ということを言ったうえ、Y1はX2の承諾を得てそれを持ち帰り、被告会社においてそれと同じ内容の保障設計書ということで保障設計書(乙第一〇、一一号証)を作成し、Y1がそれらを持参したうえX2を勧誘し、結局X2は右保険に加入することとなったという経過がある。ところで、乙第四一号証、X2本人尋問の結果によれば、X2は原告会社の前身であるa有限会社時代の昭和六〇年頃から以降会社経営の任に当っていたこと、原告会社は平成四年秋当時資本金一〇〇〇万円、従業員約二〇人、年商約五億円の会社であったこと、以前Bが契約者、子供が被保険者の郵便局の学資保険に加入したことがあること、調査嘱託の結果によれば、a有限会社を契約者、X2を被保険者とする日本生命保険相互会社の定期付終身保険に平成二年二月二六日加入したことがそれぞれ認められるが、右事実から平成四年の養老保険をY1から勧誘された当時、X2は生命保険全般について詳しい知識は有していたと認定するのは相当ではなく、X2、Y1が供述する本件保険への加入の経緯、X2の供述内容などを総合すると、同人は生命保険全般についてさほど詳しい知識は有していなかったものと認められる。そのようなX2が生命保険会社である被告会社の外務員であるY1の方から積極的に「三年経ったら元割れしない」というようなことを言われ、右バックアッププランと同じ内容の保障設計書ということで保障設計書(乙第一〇、一一号証)を作成し、X2に持参したうえ勧誘したという経過からすると、X2が供述するように、同人はY1の右説明を信じて右保険に加入したと認めるのが合理的である。Y1は、X2から、他社生保が作成した養老保険のバックアッププランを示され、後は判を押すだけで入ろうと思っていると言われたと、あたかも既にX2は他社生保から右保険の内容について十分な説明を受けていたという趣旨のことを供述するが、X2の供述に比較して信用できない。さらに、被告会社から保険証券や「ご契約のしおり、定款・約款」をもらったが、保険証券に記載された解約返戻金の額の記載を見たことはなく、「ご契約のしおり、定款・約款」の内容についてY1から説明を受けたことはなく、同人を信頼していたため特に読んだりはしていないというX2の供述は、X2のY1に対する当時の信頼感、契約締結に至る前記経緯からして、十分信用できる。

別紙一覧表1によれば、平成四年の養老保険を契約してから約四年四か月後に解約した場合の解約返戻金は既払込保険料総額に比べ少なく、Y1は本人尋問において、契約後八年か九年経たないと解約返戻金が払込保険料総額を越えないと供述する。

そうすると、Y1のX2に対する説明は客観的に真実に反する説明であったのであり、これは生命保険会社の外務員として、その基本的な注意義務を怠ったものと言える。Y1は、右契約までの間自分で右保険について解約返戻金の額を調べたこともないにもかかわらず、顧客であるX2に対し、「三年目で元割れしない」ということで保険商品を勧誘したのであり、それは怠慢と言わざるを得ない。

2  次に、別紙一覧表4の2、3の保険(契約日は平成七年一月一日)は前記平成四年の養老保険と同様、原告会社の従業員を被保険者とする満期一〇年の養老保険であり、その内容は保険料の払込方法も含めて基本的に同一であること、従って平成七年一月一日の契約に当たってY1の積極的な説明の有無にかかわらずY1とX2との間で平成四年の養老保険と同一との認識のもと契約が締結されたと推認されること(Y1本人尋問調書の一五丁表八行目以下は別紙一覧表4の2、3の保険についても、Y1がX2に対し、「三年目で元割れしない」ということを話したことを肯定した趣旨と解される。)、甲第三号証の一ないし四によれば、X2が被告らに対し、Y1から「三年目で元割れしない」と言われたのに実際は異なるとの苦情が述べられたのは平成八年一二月一二日であり、その頃X2は初めて右事実を認識するに至ったと推認されることなどから、前記平成四年の養老保険について認定したことは右二件の保険においても同様であると認められる。

3  次に、X2は、本人尋問において、別紙一覧表1の13<省略>の終身保険(契約者は原告会社、被保険者はX2、死亡保険金額一億円、契約日は平成四年一二月一日)の契約に際し、Y1から「三年経ったら元割れしない」ということを言われたので契約したと供述する。

これに対し、Y1は、本人尋問において、右保険は六五歳まで二五年間以上にわたり保険料を支払い、その時点で一括受取り(五一〇二万円プラス特別配当)もできるし、年金で受け取る(六五際時は年金額は約六二二万円プラス特別配当、以後増額する。)こともできる保険であること、右契約締結に至るまで平成四年の夏頃から頻繁に原告会社を訪れ、X2に説明したうえ勧誘し、ようやく平成四年一二月一日契約締結に至ったこと、その間X2に対し何回もパンフレット、数種の保障設計書(乙第三三、三四号証はその一部)を手渡していること、「三年経ったら元割れしない」ということを言ったことはないことなどを供述する。そして、乙第三四号証には、右保険の性格の説明として、表面に星印を付して「配当金は変動(増減)します。」と記載されていることが認められる。

ところで、右保険の性格は終身保険で長期間にわたり保障が継続することがそもそも前提となっており、契約締結に至るまでの間、Y1は頻繁に原告会社を訪れ、X2にパンフレット、保障設計書を交付するなどして説明したうえ勧誘し、ようやく平成四年一二月一日契約締結に至ったという前記供述は信用でき、右事実を総合すると、Y1の勧誘も長期間にわたり保障が継続することが前提としてなされたと認めるのが合理的である。X2の前記供述は信用できない。他に原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。

4  さらに、それ以外の保険について検討する。

X2は、本人尋問において、あまり詳しい説明を聞かずに、元割れしないということだけ気にかけてそれ以外の保険に加入したと供述する。しかし、右供述は具体性に欠け、Y1の本人尋問の結果に比較して、信用できない。他に原告らの主張を認めるに足りる証拠はない。

5  以上から、平成四年養老保険一二件、別紙一覧表4の1、2の養老保険の計一四件の勧誘について、Y1には過失による不法行為が成立する。そして、右行為は同人が被告会社の事業の執行につきなしたものであり、使用者である被告会社は使用者責任を負担すべきである。

二  損害について

甲第一号証、三号証の一ないし四、第四号証の一、二、X2本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、X2はY1に対し、平成八年夏頃から以降本件保険の現在価値を表にして持参するように再三依頼していたところ同年一二月頃になりY1がX2に対し、口頭ですべて元割れしているということを伝えてきたこと、これに対しX2はそれは加入に際し受けた説明と相違するとして直ちに怒ったこと、X2は程なく被告会社に抗議したところ被告会社奈良中央支社において文書(甲第一号証)を作成しX2に交付したこと、その後原告らは祖谷謙一弁護士を代理人として被告会社と交渉したが、合意に達しなかったこと、そして原告らは右のような経緯から生じた不信感などから平成九年三月末頃本件契約を解約したことが認められる。右の経緯に鑑みると、原告が元割れしていることを認識しながら解約したことを不相当とは言うことはできず、基本的には支払った保険料と受け取った解約返戻金の差額が相当因果関係ある損害と言える。

しかし、被告会社は、各保険契約の期間中、それぞれの保険商品の内容に応じた保障(具体的な内容は別紙一覧表の通り。平成六年一〇月に特約を解除した。)をしていたのであり、それらを損益相殺するのが相当である。右割合は右保障内容、危険保険料の額(乙第二、三、一〇、一一号証)などを斟酌して三割と認めるのが相当である。原告会社の損害額は払込保険料と受け取った解約返戻金の差額金三九六万四七九二円の七割の二七七万五三五四円(一円未満切り捨て)である。

さらに、被告らは原告会社は保険料を経費として損金に処理することにより節税メリットを享受したのであるから、それらを損益相殺するのが相当であると主張し、X2、Y1本人尋問の結果によれば、従業員が被保険者で受取人がその遺族の場合、税務上保険料の相当部分が損金になることが認められるが、それは生命保険に加入した場合に一般的に受けられるメリットであり、保険会社もそれを一つの謳い文句として勧誘していることは当然予想されることで、損害賠償請求訴訟においてそれを損益相殺するのは相当ではない。

第四結論

よって、原告らの請求は原告会社について主文の限度で理由がある(原告会社が求めている遅延損害金の始期である平成九年四月一日は右保険の解約時期より後である。)から認容し、その余は失当であるからいずれも棄却し、主文の通り判決する。

(裁判官 窪木稔)

<以下省略>

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